「互夢の木」は、「情報を力に変える視点」を得て、 現実社会において結果責任を負える |
人材に共になることを目指した勉強会です。平成6年1月より毎月1回行ってきました。最 近の例会の内容と今後の予定をお知らせいたします。 詳しくは、03-5389-6726 (電話・FAX自動切換え)まで、ご連絡下さい。「互夢の木」3月例会
日時:3月26日(木)午後6時30分−8時50分
講師:中島 章夫氏
衆議員議員、環境政務次官
演題:環境問題 − 私の主張
会場:学士会館本館 302号室
(営団半蔵門線、都営三田線、都営新宿線 神保町A9出口そば)
1Fの掲示板で、会場部屋番号をお確かめください。
参加費:1500円(コーヒー・軽食代込み)
「互夢の木」4月例会
日時:4月25日(木)午後6時30分−8時50分
講師:金井 浄氏
株式会社アイサット代表取締役社長
演題:体験から生み出した「知識から結果を生み出す」ための方法論
会場:学士会館本館 301号室
(営団半蔵門線、都営三田線、都営新宿線 神保町A9出口そば)
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参加費:1500円(コーヒー・軽食代込み)
「互夢の木」5月例会
日時:5月15日(木)午後6時30分−8時50分2月22日平宮氏の内容
講師:「互夢の木」主宰者
演題:平成不況究極の脱出法
会場:学士会館本館 301号室
(営団半蔵門線、都営三田線、都営新宿線 神保町A9出口そば)
1Fの掲示板で、会場部屋番号をお確かめください。
参加費:1500円(コーヒー・軽食代込み)
はじめに
1980年〜1985年頃までは、たいがいのコンピュータ・ユーザが多種多様なプロセッサと 多種多様なOSを使っていた。そのため、ソフトウェアのポータビリティのもんだいは、も っぱらユーザ゛のもんだいであった。 けれども1990年〜1995年頃(つまりリストラクチャリングや「ダウンサイジング」とい った言葉がさかんに言われていた頃)までに、たいがいのコンピュータ・ユーザはインテ ルのプロセッサとマイクロソフトのOSだけを使うようになってしまった。したがってソフ トウェアのポータビリティのもんだいは、ユーザのもんだいではなく、(とりわけインテ ルのプロセッサやマイクロソフトのOSに依存しないコンピュータを製造している)メーカ ーのもんだいになってしまった。 1990年代の前半には、いくつかの、インテルのプロセッサ・チップと互換性を持ったプ ロセッサ・チップや、マイクロソフトのOSをエミュレートするソフトウェアが開発された 。けれども(多くのメーカーがこれらに期待したかもしれないのだが)あまり普及しなか った。 もはや同じ土俵(=パラダイム)の上でインテルやマイクロソフトと争うのは無謀なビ ジネスとなりつつある。おそらくまったく新しいパラダイムを構築してそちらの側にユー ザの関心を引きつける努力をしたほうが賢明である。そしておそらく、次の五点を無視し て新しいパラダイムを構築することはできないと思う。
コンピュータの価格破壊
コンピュータ・システムのハードウェアは、主に、プロセッサ・チップとメモリ素子で できている。そして、プロセッサは、(技術革新により)加速度的に高性能化している。 けれどもその値段が大幅に下がるということはあまりなかった。これまでコンピュータの 価格破壊はもっぱらメモリの価格破壊に依存していた。 ところが、近年になって、メモリの価格破壊が(技術革新により)大きく進行するとい うことがなくなりつつある。にもかかわらずユーザはよりいっそうのコンピュータの価格 破壊が可能であると考えている。 プロセッサ・チップが大幅に値下がりするようなことがあれば、よりいっそうの価格破 壊が可能である。とはいえ(事実上の標準となっている)インテルのプロセッサ・チップ が大幅に値下がりするということを期待することは、あまりできない。けれども新しく設 計されたRISC プロセッサ・チップならば(期待することが)できる。だが、その場合、 (事実上の標準OSである)Windowsが動かない。
マイクロソフトはWindowsNTをリリースすることによってこの問題を解決しようとした 。けれどもWindowsNTはメモリを多量に消費する(今ではWindowsそれ自体がメモリを多量 に消費するようになってしまった)。安いRISC プロセッサ・チップを使ったとしてもメ モリ素子が多量に必要になるのであればよりいっそうのコンピュータの価格破壊は不可能 である。 ユーザは、よりいっそうのコンピュータの価格破壊を可能にするには、安いRISC プロ セッサ・チップだけでなく、メモリ消費量の少ない新しいOSと新しいアプリケーション・ ソフトウェアも必要であると考えはじめている。
インターネットによるエレクトロニック・コマース
流通革命が、たんに流通コストを削減するだけのものであるとしたら、あるいはショッ ピングを容易にするというだけのものであるとしたら、それは「革命」の名に値しない。 流通革命は流通コストを削減しショッピングを容易にすると同時に新しいビジネスを創出 するものでなければならない。 ところで、インターネットは、流通コストを削減しショッピングを容易にする。そして 新しいビジネスを創出する。 インターネットはより積極的に利用されるようになるであろう。そしてインターネット 端末はエレクトロニック・コマースを成立させるための必須のアイテムとなるであろう。 だが、もんだいは、それ(=インターネット端末)がパソコンでなければならないという 理由はどこにもないということである(ファミコンのようなものであってもかまわないは ずだ)。
マイクロソフトはWindowsパソコンをインターネット端末にしようとしている。また自 社で構築したMSN(マイクロソフト・ネットワーク)の端末にしようともしている。そう することによってエレクトロニック・コマースの主導権を握ろうとしている。けれども、 彼らが失敗する可能性は大きい。というのは、パソコンよりもファミコンのようなものの ほうが(端末機としては)価格が安いし、また、使いやすいからだ。
次世代ゲーム機と500ドルPC
ソニーのPlayStationやセガのSaturnは強力な32ビットRISCプロセッサ・チップを搭載 している。強力な補助プロセッサ・チップも搭載している。にもかかわらずパソコンの1 〜2割程度の価格で市販されている。「家電製品として量産されているからである」とい ったこともあるにはあるが、それ以外にも、プロセッサ・チップの値段が(インテルのプ ロセッサ・チップではないので)安いといったことと、実装しているメモリ素子(約2Mバ イト)が少ないといったことがその理由である。今年3月に市販される予定のバンダイの Pippinや4月に市販される予定の任天堂のNintendow64も(プロセッサ・チップの性能は高 いが)実装しているメモリ素子が少ない(約4Mバイト)。
次世代ゲーム機をインターネット端末として利用することはできる。けれども(実装し てるメモリ素子が少ないので)パソコン等と同じ方法でインターネット端末化することは できない。もっと言えば、マイクロソフト(そして/あるいは、IBMやアップル)の技術 で次世代ゲーム機をインターネット端末化することはできない。
オブジェクト指向とコンポーネントウェア
「オブジェクト」は、たんに、「物」を意味するだけの言葉(シニフィアン)ではない 。「オブジェクト」は「物」「事」「事物」といった「客観」を意味する言葉である。 Cのプログラム・テキストの中では、「変数」は、ふつう、物的客観を意味するオブジ ェクトである。「関数」は、ふつう、事的客観を意味するオブジェクトである。C++プロ グラム・テキストの中のクラスのオブジェクトは、ふつう、事物的客観を意味するオブジ ェクトである。
プログラミング言語がオブジェクト指向になってから、物的なものや事的なものだけで なく、事物的なものまで容易に表現することができるようになった。
オブジェクト指向の考えは、プログラミングだけでなく、コンピュータ・オペレーショ ンも新しくする。これまで、ユーザは、データ・ファイル(物的な実体)とプログラム・ ファイル(事的な実体)を別個のものとして扱っていた。けれども、これからは、それら をひとつのもの(事物的な実体)として扱うようになるであろう。たとえば、あるワープ ロ・ソフトで作成した文書ファイルは、そのワープロ・ソフトといっしょに保管し、そし てそのワープロ・ソフトといっしょに配布するのが望ましいと考えるようになるであろう (そして/あるいは、文書ファイルをそのようなコンポーネントとして扱うのが常識とな るかもしれない)。
このような時代においては、それ以前の時代と同じ方法でパッケージ・ソフトを市販し 続けることはできない。値段を大幅に安くしてコピーを認め、そしてそのコピーにも課金 するか、それとも使用した回数に課金するしかない。そして、何よりも重要なことは、( パッケージ・ソフトが)プラットフォームやOSに依存したものであってはならないという ことであり、サイズの小さなものでなければならないということである。
仮想コンピュータの役割
IBMのVMは、おそらくもっともはやい時期に普及した仮想コンピュータ・システムであ る。VMは、本来ならば、もはや良いアーキテクチャのプロセッサとは言えない370プロセ ッサの下で、より使いやすいアーキテクチャのプロセッサを(仮想コンピュータとして) ユーザに提供するものでなければならなかった。さらに、新しいアーキテクチャのプロセ ッサの下で(370プロセッサの下でしか動かない)MVSのようなOSを動かすためのものでな ければならなかった。けれどもIBMはそれをしなかった(というよりも、おそらく当時は その必要がなかった)。
VMは、もっぱら、新しいOSを370プロセッサの下に移植する作業を行うためのプラット フォームとして利用された。あるいは(370プロセッサの下で動く)異なるOSにアプリケ ーション・ソフトウェアを移植する作業を行うためのプラットフォームとして利用された (当時、VMは、それだけで十分役立った)。
けれども、今日においては、仮想コンピュータ・システムは、それではいけない。まず 、良質なアーキテクチャのプロセッサをユーザに提供するという役割をはたさなければな らない。なぜなら、(事実上の標準となっている)インテルのプロセッサのアーキテクチ ャは、あまりにも多くの過去からのもの内包しているため、複雑で使いづらいからである 。そして、最新のRISCプロセッサは、あまりにも処理速度を優先しているため、むずかし くて使いづらいからでる。
次に、異なるプロセッサ間のアーキテクチャの差異を解消するという役割もはたさなけ ればならない。なぜなら、前にも述べたとおり、(いろいろな理由により)インテルのプ ロセッサ・チップが大幅に値下がりするということをあまり期待することができないから である。また、現実に、安いけれども多種多様なRISCプロセッサが市販されているからで ある。
現在、サン・マイクロシステムズが(ほとんどタダ同然で)配布しているJavaの本当の 目的は、私のみるところでは、まさにこの点にある。SPARCのような使いづらいプロサッ サをユーザが容易に使うには、それを(たとえばVAXや68000のような)使いやすいプロセ ッサとして見せるソフトウェアが必要なのだ。と同時に、特定のプロセッサの下でしか多 くのソフトウェアが動かないという状況に終止符を打つために開発したのかもしれない。
おわりに
サン・マイクロシステムズがほとんどタダ同然でJavaを配布しはじめてから、私には、 これまでインテルとマイクロソフトの収益を支えていた時代の背景となる構造が新しくな りつつあるように思える。それは、PentiumよりもPowerチップのほうがより多く売れると か、あるいは、WindowsよりもOS/2やUNIXのほうがより多く使われるといったことではな い。背景となる構造が新しくなるということは、新しいパラダイムを構築する場面が到来 しているということであり、ビジネスのやり方を新しくしなければならないということで ある。
私は反インテル主義者ではないし反マイクロソフト主義者でもない。むしろインテルや マイクロソフトには親しみを感じており、IBMやAT&Tのような大企業がコンピュータ業界 の頂点にいるよりもむしろ彼らが頂点にいてくれたほうがましだとさえ思っている。けれ ども私には今のインテルやマイクロソフトのビジネスのやり方が新しい背景と一致してい るとは思えない。また短期間にそれが改善されるとも思えない。
私には、モトローラやアップル、IBMも(そして/あるいは、ほとんどタダ同然でJava を配布しいるサン・マイクロシステムズでさえも)インテルやマイクロソフトと同様に( ビジネスのやり方が新しい背景と)一致しているとは思えない。ビジネスのやり方を新し くしなければならないというときには、何か新しい企業がどこか予想もしないような(た とえば、アメリカや日本ではなくて、EUやASEAN、ロシアやインドといった)場所から飛 び出してくることもある。今のままでもインテルはかろうじて21世紀まで生き延びること ができるかもしれないが、けれどもマイクロソフトはきびしいだろう。そして、同じこと が、多くの既存の(とりわけソフトウェアのビジネスをしている)企業にも言えるのだ。
新しいパラダイムを構築するということは「諸刃の剣」である。だが、もはや後には引 けない。「第二次ダウンサイジング」と呼んでもよいような大きな変化がはじまってしま ったのだから。
おわりに
これまでインテルとマイクロソフトの収益を支えていた時代のパラダイムが変わりつつ ある。それは、PentiumよりもPowerチップのほうがより多く使われるとか、あるいは、 WindowsよりもOS/2のほうがより多く使われるといったことではない。それは、背景とな る構造が新しくなるということであり、今のところ、インテルやマイクロソフトのビジネ スのやり方がその新しい背景と一致していない
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